第四話 移住したらやる気が出た|南阿蘇の水に呼ばれて 植原正太郎

南阿蘇村に移住してからちょうど1年が経った。自然に囲まれた土地だからこそ、都会に暮らしていた頃よりも四季の移ろいをより感じたように思う。

1年前に遡ると、移住前の僕たちは結構疲れていた。夫婦共働きのリモートワーク。2歳の娘とのお出かけもコロナのおかげでままならない。一気に、家族の世界が狭くなったような感覚だった。

最初のころは「おうち時間を楽しもう」と意気込み、DIYを始めたり、スパイスカレーに挑戦したり、軒先にビオトープをつくったりしていた。
それなりに楽しかったけど、賃貸アパートだとできることは限られており、ご近所さんに迷惑をかけるようなことはできない。

暮らしの中でできることも手詰まりになってきて、楽しさよりも疲れが上回ってきていたのだ。

東京アパート暮らしの時にひそかに楽しんでいた軒先ビオトープ。メダカやエビを飼っていた。

それが、都会をひっくり返したようなド田舎に移住してきてからは、全力で暮らしに取り組んでいる。

今年の4月から近所の空き地をお借りして、畑を始めた。ことの始まりは、いつもやさしくしてくれている近所のおじちゃんに「アパートのみんなで畑をやりたいんです。どこかいい場所ないですかね?」と相談したことだ。
すると3日後には「あそこの空き地、話をつけておいたぞ」とご近所の方の土地を手配してくれた。

こんなに広いのに無償でお借りしている。都会の感覚ではにわかには信じがたい。

この春から僕らが住んでいるアパートの三家族合同で、せっせと土を耕し、畝を作り、野菜を育て始めている。素人が有機・無農薬でどこまでできるかわからないけど「失敗すら学び」というスタンスで頑張っている。すでにハーブやサラダ菜たちは収穫できるようになっていて、食卓に毎日並ぶようになったのは、我が家の嬉しい手応えとなっている。



畑を始めたことで、ずっと取り組みたかった「コンポスト」も始めた。籾殻、米ぬかなどを資材にしつつ、食べ残しを微生物の力で70℃ほどに高温発酵させる「完熟堆肥」という方法に挑戦している。毎日せっせと生ゴミを投入しては、それがまた野菜となって食卓に帰ってくる日を楽しみにしている。

調子を掴むまではめちゃくちゃハエが湧いたのだが、今はいい感じに溜まってきている。

そして、つい先日からは「養蜂」にもチャレンジしはじめた。ニホンミツバチの皆さんにご入居いただく重箱式巣箱をDIYして、畑の一角に設置した。「自分たちの巣箱から採蜜する」というエクストリームな体験への衝動を止めることができず、半ば勢いでつくった。

分蜂の時期は終盤だし、素人の作りたての巣箱に引っ越ししてきてくれる確率なんて10%もないと思うのだが、夢を見るのは誰にでも許される権利だ。

YouTubeの動画を参考に製作。どこかのやさしい誰かが設計図も紹介してくれるありがたい時代

そんなわけで、移住2年目にして「やりたかったこと」が爆発している状態になっている。夫婦の会話も土づくりや微生物の話で持ちきりだ。

暮らしのことにちゃんと取り組んでいたら、人生なんてあっという間なんだろうなと思う。自分で暮らしをつくっていくことは何事にも代えられない楽しさがある。これからも「やる気」の火を絶やさずにチャレンジしていきたい。


筆者プロフィール

植原 正太郎

うえはら・しょうたろう

1988年4月仙台生まれ。いかしあう社会のつくり方を発信するWEBマガジン「greenz.jp」を運営するNPOグリーンズで共同代表として健やかな経営と事業づくりに励んでます。2021年5月に家族で熊本県南阿蘇村に移住。暇さえあれば釣りがしたい二児の父。

WEBマガジン「greenz.jp」

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