石見銀山 群言堂

第十一話 地球の意図を生きる|群馬県高山村 在る森のはなし 木暮咲季

天からの手紙

山形に10年ほど暮らしていたので、群馬県へ移住してからしばらくは雪がない冬は物足りないものでした。

山形市だったので豪雪地帯ではありませんが、とはいえ雪が降ればしばらく道路の白線は見えず、どこからどこまでが道路かもわからない。

1年のうち数ヶ月、景色は一変し、大いなる存在と共に生活をすることになります。

今暮らしている場所に比べると自然の力がとても強く畏怖を感じるもので、自然信仰が残っている事が自然だと思える環境でした。

大いなるものに生かされており、人間はその中の一つ。小さな存在なのだ。

と、忘れていても毎年冬になると思い出させてくれる仕組みだと感じていました。

天と地を結ぶ人の営み

針に糸を通す手のスケッチ

随分前のことだけれど、2014年の寒い季節のこと。
東京にある「21-21DESIGN SIGHT」で『コメ展』という展示会があり見に行きました。

これも山形に暮らしていていた頃のことです。

その展示会の冒頭で紹介されていた言葉が印象的でずっと覚えていました。

そして、田んぼはコメを作るだけではない。

それは水と気候の調律装置であり、生物多様性の揺りかごでもあります。

水田と里山に象徴される日本や湿潤アジアの景観は、人が自然に手を加えた人工自然ですが、この「工」という字は天と地を結ぶ人の営みを意味しています。

イネと田んぼは、人がこの星において、地球生態系に参加する一員として創造的な役割を果たし得ることを証明しています。

抜粋もと: https://www.2121designsight.jp/program/kome/

地球にとって人間の存在はメリットがあるんだろうか?

それが疑問でしかたなかった私にとって、この時からこの言葉が脳裏に居座ることとなります。

また、”ものづくり”をする人の仕事に対して尊さ、美しさを見ていた理由がこの言葉で腑に落ちました。

ものづくりをする人のことを”工人”と言ったりしますが、天と地をつなぐものの仕事として、

人間の役割そのものを実直に生きる姿が、美しく見えたのでしょう。

人の役割

初詣に行く途中1人1文字づつ「あるもりのはなし」と叫んでいます※「も」担当はカメラマン
撮影:丸山えり

お正月には在る森のはなしメンバーで初詣に行きました。

その時にふと、コメ展でみた文章のことを思い出しメンバーの1人とそんな話しをしました。

その人は我をわすれた人間に、雪のように天の声を伝えてくれる役割をもった子です。

それから数週間後、その子と森にフィールドワークに行き、その話を詳しく聞きました。

”人はこの地球で、地球生態系に参加する一員として創造する力をもって生まれてきたのに、その役割をみんな忘れてしまったのね”

”人の手は美しいのよ”

2014年に見た言葉と同じ言葉をまた聞くことになったのです。



人間は忘れる生き物ですが、何を隠そう、ほとんどの人がその役割を忘れてしまっているようですし、私も度々忘れてしまいます。

人間はこの地球で、全ての命と一緒に助け合って幸せになるために生まれてきたはずです。

でも、どうしても日常生活の中で、自分の欲や不安、怒りなどの感情で役割を忘れてしまいます。

それを思い出させてくれるのが雪であったり、また自然災害であったり。しかしそのメッセージに気づいてくれる人は悲しいかな数多くないので、雪のような役割をもって生まれた人も稀にいるわけです。

2014年の私は雪からメッセージをうけとりながらも、人間に対する怒りの感情に囚われ、手仕事と自然の中で引きこもりパンクな思想で生活を送っていたわけですが、

雪の積もらない(降ってもすぐ溶ける)この地に移住してから、雪のような人に出会ったのは運命としか思わずにいられないのでした。

大地の再生

今後のランドスケープ計画について現場で話し合い中。

ここは2年前まで薮と沼で1mも歩けない場所でした。

草を刈り、風を通し、水を流したことで人も陽も入る心地よい場所になってきました。

しかしまだ草木や大地が元気になるにはもう少し手がかかりそうです。

沼になっていた場所は今、池と沢になっていますが、ここをもう少し整えビオトープにしたいと思っています。

今後これからの作業で、生態学や土木工学、または樹木についてなど詳しい人と繋がって一緒にこの場をつくっていけたらと思っています。

”工事”とは本来、人がこの地球にできるとてもシンプルな貢献だと感じています。

もし!もしもこの記事を見かけた方でピンときた人がいればぜひ、ご連絡いただけたら嬉しいです。

焚き火の焚き付けにする松ぼっくり拾い

年末腕相撲大会の結果

ちなみに誰も期待していないかもしれませんが、

前回の記事でお勧めした腕相撲大会について!結果をお伝えしますと、私は下から3番目の7位でした!

順位はともかく、人数が10名に増えたことが何より嬉しい変化です。



さて、次回で最終回となってしまいました!

何をどう書こうか今からドキドキしていますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

ではまた次回。

1位決定戦を前にみんなで集合。カメラマンが写ってないのが残念。


筆者プロフィール

木暮 咲季

こぐれ・さき

1987年群馬県生まれ。東北芸術工科大学卒業。山形・蔵王の麓にて10年間、農、教育、手仕事などの仕事をしながら半自給自足生活。2016年秋に群馬県の高山村に移住。現在は「カエルトープ」に暮らしながら「在る森のはなし」を立ち上げ&開拓中。その他、村づくり業務、移住・定住コーディネーターの委託をうけている。

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