石見銀山 群言堂

第十二話 あれから14年|群馬県高山村 在る森のはなし 木暮咲季

登美さん「なんでうちの会社に興味を持ったの?」
わたし 「暮らしや景観をこれほどに大切にしている会社がなぜ成り立っているのかが知りたかったので」
登美さん「それであなた、いつまでいるの?」
わたし 「えーと2週間くらい……」

あの時の疑問、私が叶えたかった未来はなんだったのか。
とても叶えられそうにもないボロボロのパンク野郎な身なりで大森を訪れた私だったけれど
あれから様々な変化を経て、あの時描いた未来を歩いている。

第一話より

千と千尋の千のように「ここで働かせてください!」と、今で言うインターン生として働かせていただいたのが14年前のこと。

2020年10月精神的にどん底まで落ちていた当時、かすかな光を辿って群馬県高山村のとある荒れた森を購入。(振り返るとよくその状態で一歩踏み出しましたねと言いたい)

この連載を始めたのが2022年の2月のこと。

最終話の今回は、ここ数年を振り返りながら最後の投稿とさせていただきたいと思います。

2020.9

2023.2 3月には第3回目の植樹を行います

2020.9

2023.2 え?同じ場所?と思われるかもしれませんが奥にあるヒノキと手前のイチョウが目印です

2023.2 後もう少しで完成のカフェスペース

美しい景色を見たい

そう思って逃げ込んだのは人間のいない世界でした。

感情がない自然の中にいれば楽。人間なんていなくなればいい。

深く人と関わることを無意識に避けて生きてきました。

でも待って。美しい景色って何?と立ち止まった時

それは全ての命が輝く景色でした。

世界中の人間、自然、動植物、全ての命が認め合い助け合い幸せに生きている様子です。

私たちが生きている間、世界中でその景色を見ることはできないかもしれません。

でも、本気でその世界を作ろうと生きている人たちがここにいる。

そうやって子どもたちに認め合い助け合う在り方、生きる知恵を受け継いで行った先、

100年後を生きる人はその景色を見ることができるはず。

そう思わせてくれたのがこの森でした。

まずは自分から

「そんなの綺麗事、この世界は汚い人間ばっかりだもん。そんなの無理だよ」

と、何度も仕舞い込んだ願いでしたが、本気でその未来へ向かい始めた時、

やるべきことはまず自分と向き合うことでした。

何も考えてないやつらだと人を馬鹿にし、悪いのはあいつだと人のせいにして生きてきた。

でも孤独になるのは寂しい、人から認められたい、居場所が欲しい...。

何を隠そう、私こそ、本当の助け合いなんか一度もしたことがなかったのです。

実は自分こそが愚かな人間だったと気づいてしまってから、嫌いな自分とたくさん出会いました。

その状態から自分の足で歩くことができるようになるまで、たくさんの仲間の力を借りました。

自立できてようやく、人のために生きることってどういうことなのかを知りました。

そして今、一人ではすぐに折れてしまった願いも、仲間たちのおかげで声に出すことができます。

人は愛するために生まれてきたのだから

人が生きるために、土、水、空気、風、太陽、火、さまざまな物質が必要です。

そしてそれらを使い幸せに生きていくためには人と人が助け合って生きていくこと、それらの物質を分かち合い、守る仲間(動植物菌類)と共に生きる必要があります。

しかし、人は感情をもたされた生き物です。

自分の損得、自己保身、嫉妬、妬み...感情によって目的を忘れ、助け合うどころか身近な人とですら助け合うことができません。

本当は愛するためにもたされたものなのに、感情に邪魔をされてしまっているのです。

シンプルでいて大きな矛盾。これって多分だけど人間の一番大きな課題だと思うのです。

”世界中の人間、動植物菌類、全ての命が認め合い助け合い幸せに生きること”

私は、この地球の一番シンプルなミッションを実現するために

人が自己や他者と向き合い、手をつなぎ合う関係性を土台とした会社(大きな家族)を作り守っていきます。

(そのために必要な経営のスキルは伸び代しかないので...引き続き精進していきます!)



物販からスタートしましたが、春にはイベントを皮切りに場が開かれます。

そして夏にはカフェがスタート。

その後は、メンバーそれぞれが自分の能力を最大限に磨き、一つずつ、一歩ずつ、ゆっくりですが100年または200年先の未来につながる事業がスタートしていきます。



あれから14年。

ようやく...あの頃思い描いたことが形になりはじめたのかもしれません。

最後に

最後に、大切な仲間たちの写真で終わりにしたいと思います。

こんなに家族がたくさん増える人生を送ることができるとは思ってもみませんでした。

この関係性は私が作り上げたものでは決してありません。

メンバーそれぞれの物語があり、その人生の中で本当の意味で他人のために、地球のために生きようと決めて手をとりあったことで生まれた関係性です。

一人ひとり紹介するにはもう12ヶ月くらいかかりそうなので、写真だけ載せさせていただきます。

撮影はすべて丸山えりちゃん。

母をはじめ、ここに写っていないたくさんの人にお世話になっています。

そして連載の機会をくださった、根のある暮らし編集室のみなさま。

読んでくださったみなさま。

ありがとうございました!!

機会がありましたらぜひ群馬県高山村へお越しください。

どうぞ、これからも末長くよろしくお願いいたします。


筆者プロフィール

木暮 咲季

こぐれ・さき

1987年群馬県生まれ。東北芸術工科大学卒業。山形・蔵王の麓にて10年間、農、教育、手仕事などの仕事をしながら半自給自足生活。2016年秋に群馬県の高山村に移住。現在は「カエルトープ」に暮らしながら「在る森のはなし」を立ち上げ&開拓中。その他、村づくり業務、移住・定住コーディネーターの委託をうけている。

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