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第八話 木と触れる、子どものあそび場|オークヴィレッジの根のある仕事

第8話の今回は、子どもの豊かな感性を育む「木育」についてのお話です。

オークヴィレッジ高山本社で企画・営業を務める服部が、導入事例を基にお届けします。


はじめまして。服部と申します。

今回は、富山県にある氷見市海浜植物園にお納めした、地域材を活用した木のおもちゃ制作の取組みについてお話ししたいと思います。

まず、氷見について少しご紹介します。氷見と言えば冬の寒ブリが有名ですよね。

氷見市は浅い海底から急に深海へとつながる地形から「天然のいけす」と呼ばれる富山湾に面しており、広大な湾内には大型のブリをはじめ、全国に知られる白エビやホタルイカなど豊富で様々な種類の海の生きものが生息しています。

また、富山県は県土全体の2/3が森林であり、特に氷見は海の幸ばかりでなく木質資源にも非常に恵まれ、ここ10年ほどは山地の大半で育つスギを「ひみ里山杉」と名付け、官民挙げて全国に向けたブランド発信に取り組んでいます。

「ひみ里山杉」は一般的なスギ材と比べスギ特有のピンクの色味が濃く、虫害にも強いその特性から昔から建材や船の材料にも使われており、近年では開館した富山県立美術館の内装にもふんだんに活かされています。

今回の木のおもちゃ制作の取組みは、この「ひみ里山杉」を中心とした富山県内の針葉樹・広葉樹を活用した木質化リニューアルを進めたい、という氷見市海浜植物園の公募事業に私たちが応募し、採択いただいたものでした。

氷見市海浜植物園 外観

もともと私たちオークヴィレッジは、国内各地域の材を活用した木のおもちゃ・家具づくりに取り組んでおり、例えば、地元・岐阜県のブナ材を使った木馬や、群馬県みなかみ町のコナラ材やクリ材を使ったチェアなどを開発してきました。

通常の木材市場から材を調達するよりもうんと手間はかかりますが、木が育つそれぞれの地域の行政や民間と連携しながら森林資源を動かすことで、トレーサビリティ(=素材の産地が追跡可能な状態)をお客様に提供できるのはもちろんのこと、森林循環を促進して環境保全につなげられること、地域に暮らす産業や雇用の活性化にも貢献できること…

そんな願いを抱きながら、素材から意義を持つモノづくりを行うようにしています。当コラムのタイトルに準えれば、人と自然の大切な“根っこ”の部分を、モノづくりを通じて元気にしたい…そんなイメージです。

東京おもちゃ美術館と共催する木育事業「木育キャラバン」

せっかくですので、制作した木のおもちゃについて、一部ご紹介します。

氷見市海浜植物園の玩具エリアは大きく二つのホールに分かれており、小さな乳幼児が親子で遊べる「ひみキッズ広場」、そして子どもが一人でも楽しめる「冒険の島」エリアがあります。

そのうちの一つ、ひみキッズ広場に備えたのは『ぶり1000本つみき』『ぶりおこしのマリンバ』『木の玉のはまべ』と名付けた、木の質感を感じたり音を響かせたり、頭で考えるよりも五感で楽しめるおもちゃの数々。

それぞれちょっと変わった名前を付けていますが、どれも氷見だからこその文化や風土を取り込んだものです。

館内「ひみキッズ広場」

ぶり1000本つみき』は、氷見の漁師さんに昔から伝わる言葉「木1本、ぶり1000本」をモチーフにしています。

山の源流に木が元気に育っていれば、その働きで養分ゆたかな水が海へと注ぎ、藻やプランクトンを育て、小魚から大きな魚へと命の循環が形成される・・・という教えです。

これに倣ってブリ型積木はちょうど1000個で揃え、小型が500個、中型が300個、大型が200個と、成長のバリエーションも見比べられるようにしました。

お片づけをする什器にもひと工夫を重ね、地元で毎年行われる「氷見祭」の祭屋台やブリ漁船の型を参考にしながら、素材にはひみ里山杉だけを用い、ふだん身近な文化や産業のごっこ遊びが楽しめるようにしています。

なお積木の木材には、今回のリニューアル工事で伐採した園内の木々(カラスザンショウやレンブなど)の材を使わせていただき、ごく身近な場所・できごとからの木の活用についても、実感できるようにしました。

山と海をつなぐおもちゃ『ぶり1000本つみき』

ぶりおこしのマリンバ』は、トンネル型の大型打楽器です。

富山をはじめ北陸では雷鳴が伴う大荒れの日を「ぶりおこし」と呼び、ブリを誘い出すような雷の後は寒ブリが豊漁になる時期を迎えることから、吉兆として知られています。

図柄の切れ込みの入った壁面を叩くと、ドンドン、ボンボン、と、ひみ里山杉のやわらかい“ぶりおこし”が響いて…お子さまにとって雷はちょっと怖いイメージですが、地域に根づく謂れとともに違った親しみを持ってもらえればと願いました。

雷と海、ブリが描かれた『ぶりおこしのマリンバ』

続いては4,000個もの木の玉が入った『木の玉のはまべ』です。

植物園のすぐ外には広い砂浜が広がっており、夏になると海水浴で浜の砂に体をうずめて遊ぶ子どもがたくさんいます。それと同じように、ホオやカバの木でできた木の玉に包まれてみると…、木の香りや木の重みとともに、まるで木と一体になるような不思議な感覚が楽しめるおもちゃです。

もう一つのエリア「冒険の島」に備えたのは、子どもが自発的に乗ったり動かしたり、一人遊びできるおもちゃです。

小学校低学年ぐらいの利用を中心に見据え、体の動きと五感を使った遊びが揃っており、家族や友だち、あるいは別の来館者と一緒になって交流を広げるとともに、子どもたちが自ら使いこなして遊ぶことで能動性の育みを促します。

たまご型の木の玉がいっぱい『木の玉のはまべ』

木の玉をゴロゴロと入れていく作業はなかなか大変でした…。

メインに備えた『森のころころ合唱団』は一見、木琴のような構造ですが、バチで音盤をたたくのではなく、木の玉が転がる音色によりメロディが奏でられるようにしています。

なおかつ、音盤一枚一枚は、音盤の長さではなく、固さの違う木の種類で異なる音色を出すようにしており、木も人も色々な個性が集まって豊かになっている…そんな発見ができるようにしました。

木琴の楽曲には、海浜植物園のイメージらしく“われは海の子”など数々の童謡を選んだほか、氷見市出身の漫画家・藤子不二雄A先生にちなみ“忍者ハットリくん”のアニメ主題歌も奏でることができます。

8種類の木の音色が響き合う『森のころころ合唱団』

さらに、畜産業でもその名を誇る「氷見牛」を模した木馬ならぬ「木牛」や、牛型の足こぎカート、そして牛さんたちが眠る(片付ける)小屋もひみ里山杉で作り、からだ全体で、氷見を感じられるようにしています。

ちなみに木牛やカートは、金具を一切使わない木組みのみの伝統工法ながら200kgの耐荷重試験でも壊れない、大人でも十分に乗れる頑丈な構造です。

親子で行かれる機会があればぜひ、照れくささを忘れてお父さんお母さんも木牛に乗って、日本が誇る木組みの技を確かめてみてくださいね。

木馬とともに、氷見牛を模した「木牛」で遊ぶこどもたち

以上、ほんの簡単な紹介でしたが、地域の資源や文化、そして暮らしを支える地元の仕事に対して、子どもたちがおもちゃ遊びを通じて親しみと理解を深め、そして未来の次世代へと受け継ぐことができたらと願っています。

氷見市海浜植物園の周りには、新鮮な海鮮が堪能できる氷見漁港の食堂(日替りネタの海鮮丼が絶品です)や、富山湾から立山連峰を望む雄大な景観、新しい取組みとして話題のワイナリーや、一風変わった名物グルメ「赤飯パン」など、一日だけでは堪能しきれない名所・名物がたくさんあります。

コロナ禍の現在ではありますが、この状況が落ち着いたらぜひ、海浜植物園をはじめ、氷見に足を運んでみてください。


氷見市海浜植物園
https://www.himi-kaihin.com/

〒935-0031 富山県氷見市柳田3583 TEL:0766-91-0100
開園時間:9時~17時(入園は16時半まで) 休園日:毎週火曜日 
新型コロナ感染症拡大防止に伴う入場制限のご案内、入園料やアクセスは氷見市海浜植物園のホームページをご覧ください。


【プロフィール】
オークヴィレッジは、木のおもちゃや家具、木造建築を手がける木工房です。1974年の創業以来、日本の森から木という恵みをもらい、飛騨高山の地で日本の伝統技術を駆使したモノ造りを行いながら、森林保全活動や林業の6次産業化にも取り組んでいます。

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