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第七話 木工の学び舎「森林たくみ塾」|オークヴィレッジの根のある仕事

第7話の今回は、オークヴィレッジのグループ会社が運営する木工職人養成塾「森林たくみ塾」について、森林たくみ塾・塾長を務める小木曽の話をお届けします。

自らも卒塾生である小木曽が、自身の木工修業時代の苦労話を振り返りながら、森林たくみ塾への想いを語ります。

森林たくみ塾外観


こんにちは、森林たくみ塾・塾長の小木曽です。

森林たくみ塾は、オークヴィレッジ創業メンバーが中心となって1991 年に開塾した私塾で、今年で30周年を迎えます。

「教室では職人は育たない」という想いから、職人として必要なモノの見方・考え方や、仕事へのプロ意識を身につける場として、徒弟制度(※)に倣った徹底した現場重視の実践教育を行なっています。

今年は、下は10代から上は40代までと幅広い年代と背景を持つ13名が入塾し、職人となるために2年間木工修業に励んでいます。

(※) 徒弟制度
親元を離れて親方の下に住み込んで生活から仕事までを行い、一人前の職人を目指す教育方法です。そうした中で「口伝」「技を盗む」など、徒弟制度独特の習得方法が編み出されてきました。

研修風景

大工になる夢と自然が好きだった私は、環境とモノづくりの調和をテーマにするオークヴィレッジの存在を中学生の頃から意識していて、「木工職人」に憧れていました。

しかし私の両親は、サラリーマンとして良い会社に就職させることが親の努めだと思っていたから、職人になることに親の理解が得られるわけもありません。夢は夢さと諦めて、高校~大学は現実路線の進路を歩んでいました。

オークヴィレッジが木工塾を始めることを知るのは、大学4年の夏のことです。このときには、自分に木工職人への道が切り拓かれたとばかりに居ても立ってもいられなくなって、親にも内緒で大学を辞めて職人の道に踏み出すことを決めてしまったんです。

まずやってみる。何が足りないかは、そこから考えればいい。

森林たくみ塾ってところは、初日からいきなり現場での本番から始まるのです。

塾生は木工経験なんてまったく無いし、知識もゼロ。それなのに初日から現場に立って、使ったこともない木工機械を操作し、やったことのない木工作業を始めるんです。それも練習の課題作品ではなく、商品ですよ。普通に考えたらムチャですよね。

「こっちは素人なんだから、はじめからちゃんと説明してくださいよ!」と言いたいところですが、作業の指示はしても、いちいち説明なんかしてくれないんです。

「技を盗む」とはよく言ったもので、説明を受けて理解するんではなくて、先輩やスタッフのやり方を見て学ぶんです。「教え方」よりも「学び方」、学ぶ側の姿勢が問われるんです。

入塾初日、早速現場での制作実習が始まる。

安易に教えない。考える力を身につけさせる。

たくみ塾では、それまでの学校教育での勉強方法が全く通用しませんでした。

学校では、勉強をして、試験でいい点数を取ればよかった。しかし、職人の世界では、自分の五感をフルに発揮して状況を観察・把握して、経験値から取りうる行動を3つも4つも想定して、その中から最適な行動を選択・実行して、求められる以上の結果を出すことが必要です。

その境地に至るまでは、とにかくスタッフに指示されたことを指示されたようにやること。そうやって考え方を身につけていくんです。

今でもね、マニュアルを整備して、答えを予め塾生に教えたほうがスタッフの指導する負担も少なくなるし、失敗も少なくなるから(経営的にも)楽になるなぁと考える事はあるんです。でもね、いつまでも答えを教え続けることなんて出来ないですよね。

それに、答えのない新たな問題に立ち向かうことが出来ないんです。

失敗から学ぶ。叱られて成長する。

自分の木工修業時代を振り返ると、書くのも恥ずかしいくらいに出来の悪い塾生でしたので、数々の失敗も経験しました。

木工技術の基礎を身につけるだけだったら、半年もあれば十分なのかもしれません。より重要なのは、身につけた木工技術を使いこなせるだけのモノの見方・考え方が、職人のそれに書き換わっていることなんです。

これを書き換えるには、失敗を繰り返して自分の考え方のダメなパターンに気づく必要がありますし、やはり2年間という期間が必要なのです。

現在も、やっていることは開塾当時と何ら変わりません。ただ、学校教育から木工修業への移行がスムースに行くように、フォローアップは行うようになりました。

植えて育てて伐って使う。

たくみ塾では、年に2回は「森林実習」といって、実習林の下草を刈ったり樹木を間伐したり、切り倒した木を使って簡単な木工作をしたりしています。知識として森を理解するだけではなく、自らの五感で森を捉えることが必要だからです。

私たちは、木という素材を「再生産可能な素材」として捉えています。そしてその素材は、地球環境を維持するためにとても大切な役割を果たしている「森林」の構成要素でもあるのです。

ですから、「材木」として捉えるだけでは片手落ちなんです。

「木材」としての特性を熟知し、そのクセをも活かしながら長く使えるモノを作る術を身につけるのは当然として、「森林」と「使い手」をつなぐ、いわゆる「つなぎ手」としての役割をも担える「つくり手」となるべきだと考えています。

森林実習の風景

つくる+αを担う

この30年間で卒塾生はちょうど260人。その8割がモノづくりの分野で今でも活躍しています。

職人になりたいという想いを実現するだけでなく、商品開発や人材育成、環境教育など、組織の中で更に重要な業務を担っている人もいます。

また、工芸家や木工家として木の表現を追求してモノづくりの第一線で活躍する人、地域の木材を用いて地域の活性化を担うなど、モノづくりを通してより良い社会を築く新たな取り組みをする人など、つくれることは当然のこととして、+αの分野を開拓しているのが、たくみ塾OBたちです。

この春送り出した3名の職人たち

そんな彼らも、はじめは全くの素人です。「なりたい自分になる」という強い意志を持つ若者たちが夢を実現できるよう、次なる40周年を目指したいものです。


【プロフィール】
オークヴィレッジは、木のおもちゃや家具、木造建築を手がける木工房です。1974年の創業以来、日本の森から木という恵みをもらい、飛騨高山の地で日本の伝統技術を駆使したモノ造りを行いながら、森林保全活動や林業の6次産業化にも取り組んでいます。

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