石見銀山 群言堂

今さらブラジル出張報告②|三浦編集長の日常 17

プログラム初日、ホテルのロビーで集合

1か月以上の間、じっくり寝かせたブラジル出張報告。前回はテーマとなるESD(持続可能な開発のための教育)とクリチバの紹介をしました。

ある程度背景がご理解いただけたかと思いますので、今回はいよいよシンポジウム本番のことをレポートしたいと思います。

三浦、緊張の初日

3月5日の夕方にクリチバのホテルに到着しましたが、40時間の移動の疲れが溜まっていたためもう部屋から出ず、ルームサービスでハンバーガーを頼み、それを一緒に頼んだ地元クラフトビールでお腹に流し込んで寝ました。

翌朝、ホテルのロビーで参加者全員が集合していよいよシンポジウム日程のスタートを迎えました。

緊張の初日でしたが、久しぶりの会ったユネスコメンバーとの抱擁と参加者一人ひとりの親しみやすさに助けられて徐々に気持ちがほぐれていきました。

Unilivreへの入り口は人間界から自然界への移行を表現したアート作品

メイン会場、ウニリブレに感動

ホテルからバスで移動し、メイン会場となるUnilivre(Universidade Livre do Meio Ambiente、環境自由大学:通称ウニリブレ)へ。

ウニリブレは1991年、世界に先駆けて市民や企業などに向けた環境教育を行うために建てられた教育施設です。

昔の石切り場の跡を利用した緑豊かな森の中にあります。

ユーカリの木で出来たアプローチとらせん状の通路の先に素敵な教室や会議室があります。一番上には展望台もあり、クリチバの町が見渡せるようにもなっています。

美しいモルフォ蝶が舞っているのを見て、南米に来たんだな~という実感が押し寄せて胸が熱くなりました。

らせん状の通路から会議室を見下ろす

会議室の中

ここはすばらしい場所でした。

まず何より空気がよく気持ちがいいのです。

しかも見捨てられた採石場を生かして自然溢れる公園として守りながら、教育施設として運営しています。まさに環境のことを学ぶのに最適な場所と言えそうです。

こちらでオリエンテーションをして昼食をいただき、最初の視察先へと赴きました。

昼食には美味しいケータリングが用意されました

豆料理が多く、特にご飯にかかっているフェイジャオンはブラジルでよく食べられているインゲンマメを煮た料理(見た目は完全にぜんざいでしたがもちろん塩味)

南米最大の化粧品会社BOTICARIOへ

最初の視察先は南米最大手の化粧品会社である「BOTICARIO(ボチカリオ)」の本社工場。

ブラジルで最もポピュラーな自然派化粧品ブランドを世に出し、海外展開もするグローバル企業です。

自然環境保護や動物実験をしない試験方法などの取り組みを実施しており、責任ある企業活動を行っている点が評価されているようです。

いかにも化粧品会社といったディスプレイです

工場内は撮影禁止で、写真が撮れたのはこのセミナールームだけでした

ボチカリオの取り組み

まず驚いたのは工場の規模でした。事前知識がほぼない状態で行ったので余計驚きも大きかったのですが、

クリチバ本社とバイーア地方にあるもう一つの工場で年間3億本もの商品を製造しているそうです。

従業員も9000人ほどで系列会社などグループ全体で3万人いるとのこと。群言堂の規模感からは考えられない大きさです。

三浦の見た限り、同社は以下のようなサステナビリティへの取り組みを行っているそうです。

①原料の仕入れ業者の選定にこだわり、環境を汚染していないかなどを必ずチェックしている
②グループ全体の利益の1%を環境保護の基金に回している
③動物実験をせず、社内独自の研究機関で人工皮膚を使った先進的な商品試験を行っている
④工場内には浄水施設があり、使われる水の約80%を再利用している
⑤国内4000に及ぶ拠点すべてにおいて、店舗内装やお買い物袋などにリサイクル資材を使用している
⑥使用済みの容器回収もすべての店舗で実施し、各地域のリサイクル業者の雇用や収入も生み出している

大企業としての役割や責任をしっかりと踏まえて様々な取り組みを行っていることが視察を通して分かりました。

ただ、ボチカリオの広報担当の方はあくまでもマーケティングのテーマは環境保護ではなく「美の追求」だと言っており、

社会的責任としての活動の範囲を出ないというようなニュアンスを感じました。

確かに社会的責任としての取り組みも大切ですが、もっと企業活動や理念といった企業の中枢部分までサステナビリティの考え方が浸透していくとより主体性と責任のある事業者・消費者が育っていくのではないかと思いました。なんだか今日の三浦はえらそうなこと言いますね~!

展望台のあるテレビ塔、テレコムパノラミックタワー

展望室から見たクリチバの街

レセプションは高いところで

その日の夜はクリチバの街を見渡せるテレビ塔の展望室にて市長とのレセプションが予定されていましたが、

市長は急用により来られないことになり、市長代理の方に街の歴史などを聞きながら会食をしました。

タワーの上から見ると街の全体像が分かり、その地理的特徴などからその街のことが見て取れます。

宮本常一の父親が常一に「村でも町でも新しく訪ねていったところは必ず高いところへ登って見よ。」と教えた意味が分かる気がします。

クリチバの中心部は幹線道路に沿ってビル街が続いていますが、それ以外の地域は一気に建物の高さが低くなっており、緑地面積もしっかりと取ってあります。

前回も書いた通り幹線道路はバス専用道があって渋滞も起こりにくくなっており、多くの市民は便利なバスの交通網を使って仕事や学校に通っているそうです。

見事にビルが連なっています。緑地も見事

類、ルイに出会う

本当によく計画された街だな~と感心しながらひと通り眺め、いちいちエレベーターで最上階まで運ばれてくるおいしいケータリングの料理にも感心しておりました。

今回シンポジウムに集まった人々はESDや教育に関わる研究者や実践者で、国で見てもフランス、韓国、タイ、オーストラリア、オランダ、ドイツ、インド、アメリカ、イギリス、ケニア、エジプト、日本と多様でした。

特に三浦が興味をひかれたのはフランスから来たルイでした。

まず同じ名前というだけで気になりましたが、それとは別にとても興味深い方だったのです。

ルイはフランスの貴族の王子様で、畑づくりや作物の研究、小規模農業の推進や教育に力を入れているので「ガーデナー・プリンス(お庭の王子様?)」と呼ばれているのだとか。

庭好きが高じてオリジナルのガーデニング用品ブランドも立ち上げ、自分でデザインしたというオシャレな服も着こなしていました。

知る人ぞ知るパリの標本店、デロールのオーナーでもある彼は自然環境や持続可能性への関心が高く、学校教育にも長く関わってきたそうです(生物室や教室に貼るためのポスターを作るなど、古くから自然を見つめ発信してきたデロールのアートワークは美しい本にもなっているので必見です!)。

特に、古いシャトーを買い取り、その周りの庭園を畑にしてできた作物を食事として出すホテルをやっているという話に引き込まれました。

逆に大森の暮らしや他郷阿部家のことを話すととても興味を持ってくれて、「今度日本に行ったときは必ず行くよ!」と約束してくれました。

類とルイのお約束です。

赤いベストの紳士がルイ

ということで初日の日程を終えて、バスに乗ってホテルに戻りました。

もう夜でしたがクリチバはそこそこ安全な街なので、ホテルから徒歩3分ほどのところにある米国スーパーのウォルマートまで買い物に行きました。

お土産のコーヒーや夜飲むためのビールを購入して帰りましたが、部屋に戻ってから栓抜きがないことに気付き、生まれて初めて歯を使って栓を抜くこととなりました。

いろいろな意味で貴重な経験を重ねているブラジル出張報告はまだまだ終わりません。次回は2日目からの内容をお送りしようと思います。

お付き合いのほどよろしくお願いいたします。では!


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三浦類(みうら・るい)
群言堂広報担当。愛知県名古屋市出身。

学生時代に群言堂のインターンで大森を訪れたことをきっかけに2011年入社。広報誌「三浦編集長」の制作や取材対応、WEB・印刷物での情報発信などを担当。植物担当・鈴木や阿部家・小野寺とともに狩猟免許を取得するなどして、頻繁に山や海で遊びながら大森暮らしを楽しんでいる。趣味はフラメンコギター。

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