石見銀山 群言堂

もみほぐし麻の魅力【登美 × 滋賀県・滋賀麻工業株式会社】第3回

2018年 5月

ブランド「登美」の夏の定番、「もみほぐし麻」。

群言堂のデザイナーを務める折井が滋賀麻工業株式会社(以下、滋賀麻さん)の生地に惚れ込み、以来毎年作り続けているシリーズです。

2018年 もみほぐし麻ラインナップ(左から刺繍レース、格子柄、菊柄プリント)

ありがたいことに、毎年この時期になると、スタッフが長年愛用しているもみほぐし麻のブラウスやワンピースを「素敵ですね」と言ってくださるお客様がいらっしゃいます。

2018年春、群言堂スタッフは滋賀麻さんを訪問し、社長の山田清和さんと、父であり会長の山田清史さんにお話を伺いました。

(写真左から、山田清和さん、山田清史さん)

群言堂公式サイトでは、滋賀麻さんの歴史や私たちとの関係などのお話を全3回に渡り連載しています。

連載第1回目【滋賀麻さんの歴史】

連載第2回目【滋賀麻さんとの出会い】

第3回目となる今回は、滋賀麻さんとつくる『もみほぐし麻の魅力』についてご紹介させてください。

素材の良さを引き出しています

前回ご紹介したように、年を重ねるごとに滋賀麻さんとのやりとりが徐々に深くなって、おかげさまでこだわり抜いたものを作れるようになりました。

商品開発のために、5回以上試作を重ねることも茶飯事。
滋賀麻さん独自の技術と試行錯誤によって、繊細な糸を織り上げ、もみほぐし麻の〝しわ〟の風合いをつくっています。

一番思い入れが深かったのは、2004年に作った最初のもみほぐし麻。今でも愛用している折井のブラウス。

在職人の手と織機によって再現されている、近江のちぢみ加工。
専門性の高い織機は、スイッチを押したら誰でも使えるわけではなく、熟練の職人にしか使いこなせないもの。

生地の「仕上げ」といっても一般的な生地とは異なり、職人さんの絶妙な加減が必要な工程です。せっかく生まれた「もみほぐし」の味わいやシボ感を残しつつ、生地にやさしく慎重に仕上げられています。

強く引っ張らず、シボ感を残しつつ生地幅を整えていきます。ゆっくり低速で生地に負荷をかけずに行うため、時間と手間がかかりますが、もみほぐし麻の風合いを最後まで残す大事な工程です。

幾種もの機械を組み合わせ、細やかに手を入れることで、素材の良さを引き出します。
柔らかな手触りとゆるやかな立体感を表現できる生地は、こうして織りなされるのです。

10年以上着込んだブラウスと、元の生地を触り比べることができました。

「13年間洗って着込んだら、こんなに柔らかくなりましたの。これがもみほぐし麻の生地なんですよ」(折井)

着込んでいくと、衰えるどころか上品に育っていく

熟練の技術と細やかな心遣いで紡がれるもみほぐし麻の〝シボ感〟は、肌触りに独特の味わいを生みます。

「もみほぐし麻は普通の平らな生地と違って、細かな凹凸があります。これを私たちはシボ感と呼んでいます。肌に触れる接点が少ないですから、空気の流れる層ができるんですよ」(山田さん)

そんなもみほぐし麻は、春にはじまり、蒸し暑い日本の夏に着たくなる服。

「ほんとにね、風が通り抜ける感じがして、涼しいの。肌触りも気持ちいいんです」(折井)

折井の毎年の楽しみは、ちぢみのタンクトップの上に、もみほぐし麻のブラウスを着ることだとか。

「旅行に行く時にいつも着て行きます。ホテルで洗って、タオルで挟んでトントンと水気を取った後干しておいたら、朝にはまた着られるのよ」(折井)と話すように、もみほぐし麻は〝乾きの良さ〟も特徴です。

普段使いにおいても、洗ったら全体を手で整えて干すだけで、アイロンも衿だけ軽くかけるくらいでOK。
おなじ服でも付き合い方次第で、年月を重ねて風合いが変化していきます。
「その人オリジナルの風合いが育ってくるのが、もみほぐしの麻を着る楽しさなんです」(山田さん)

「着込んでいくと、衰えるどころかツヤが生まれ、生地が上品に育っていくもみほぐし麻。だから、何年も大事に着ようって思えるの」(折井)

手をかけてでも、着て嬉しく、ワクワクできる服を作りたい─。
そんな滋賀麻さんと群言堂の想いがめいっぱい詰まったもみほぐし麻は、着続けるほど愛着の増す服。
この夏、あなたも着てみませんか。ぜひ一度、触れに来てくださいね。

撮影と書いた人

タクロコマ(小松崎拓郎)
1991年生まれ、茨城県龍ヶ崎市出身の編集者/カメラマン。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集部所属。

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