石見銀山 群言堂

ここまでやれば立派

結婚当初、大吉っあんは趣味のない人だと思っていた。
ところが二十代後半、本店の改修工事以来、
脱級建築士、大吉っあんは目覚めてしまった。
友人曰く、「一番タチの悪い趣味ねぇ お金がかかるわよ 普請道楽って言うじゃない」
確かに二十数年で、とうとう町内に七軒も新築、移築、改築をしてきた。
おかげで大金持ちならぬ、大借金持ちになってしまった。
めったに机に向かって仕事をしない人が、
いつになく集中しているかと思えば、図面を書いている。
よほど性に合っているらしい。
その集中力、出来れば本業にも生かしてもらいたいねぇ。
しかし、今回ばかりはいい仕事をしてくれました。
妙見堂の修復再建は大吉っあんが図面を書いた訳ではないが、
今、正に倒壊寸前だった町内の妙見堂の修復再建の音頭をとってくれた。
このご時世、言ってはなんですが、皆さん家計を切り詰めてのつつましい暮らしぶりなのに、
妙見堂再建を呼びかけたところ町内から浄財が集まり始め、
やがてその輪が広がり、この度無事落慶法要の運びとなった。
妙見菩薩は菩薩の名がついているが、厳密には天界に住む神様であり、
北極星を神格化したものである。
北極星は位置を変えない星であることから、方位、緯度の指針とされている。
つまり、ぶれない神様である。
開運厄除けの妙見様のこと、御利益は「心願成就」、「商売繁盛」など、
いろいろあるが、今の私は「ぶれない神様」として祈願したい。
ぶれない信念と、ぶれない世界観で、ぶれない企画が出来ますように。
最近、「どっしりと構えて登美さんらしくしたほうがいいよ」と大吉っあんがしきりに言う。
「私ぶれているのかなぁ」
ちなみに大吉っあんの守り本尊は不動明王、ぶれないはずである。
というより、初めからおさまらない、定まらない人だからぶれ様がないのかも…

登美

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