石見銀山 群言堂

銭湯めぐりの大事な相棒「松野屋の竹製湯かご」【私のめづる道具#4】

暮らしを大切にする「あの人」に、お気に入りのひとしなを聞く連載「私のめづる道具」。

第4回目は、前回「金継ぎセット」に込めた想いを教えてくれた、gungendo COREDO室町店スタッフの須釜奈津美が再登場。

・参考:豊かな時間の過ごし方を教えてくれる「金継ぎセット」【私のめづる道具#3】


銭湯めぐりが大好きだという須釜の毎日を、より豊かに彩ってくれるという、松野屋の竹製「湯かご」の話を聞きました。

(以下、語り手:須釜 奈津美)

日常が垣間見られる銭湯という場所が、大好きです

画像提供:天徳湯(灯台もと暮らし)
※2017年7月末で天徳湯は閉店済み。開店時は、須釜もよく立ち寄ったそう

もともと旅が好きで、学生時代から日本全国をよく旅していました。

そのときの大きな楽しみのひとつが、地元に根づいた銭湯めぐり。 お風呂に入るという行為自体が好きなので、お湯を楽しみに行くのはもちろんなのですが、銭湯には「その土地で暮らす人たちの日常」が色濃く反映されている気がします。

たとえば、洗い場で頭を洗いながら、地元のおばあちゃんたちが他愛もない会話を繰り広げていたり、そこに方言が混ざっていたり、湯船に浸かりながら「旅人かね」と話しかけてもらって会話が弾んだり。

そんな瞬間が大好きだから、いつまでたっても旅先での銭湯通いがやめられない。

画像提供:天徳湯(灯台もと暮らし)

画像提供:天徳湯(灯台もと暮らし)

社会人になってからは、「家の近所にも銭湯があったらいいのに」という想いが募って、じつは、銭湯が集まるエリアに引っ越しました。

仕事終わりにふらりと銭湯へ行ったり、週末は少し足を伸ばして、都内の有名銭湯に行くこともあります。お風呂上がりに、常連さんに珈琲牛乳をごちそうしてもらう時間は、なんだかすごく贅沢。

こんな風に、日常の中に銭湯が溶け込んだ毎日を楽しんでいます。

銭湯めぐりをもっと楽しくしてくれる、竹製湯かご

そして、その時に必ず持っていく必須アイテムが、暮らしの道具を取り扱う「松野屋」で購入した竹製の湯かごです。

湯かごとは、日本最古の温泉ともいわれる愛媛県・道後温泉の外湯めぐりにも使われている、温泉用のかごのこと。

出会いは、近所の銭湯。常連らしいおばあちゃんが、手慣れた様子でシャンプーやリンス、石けんやてぬぐいなどを入れた湯かごを、さらりと浴場まで持ってきていた様子に一目惚れしてしまいました。

今では私も、自宅で使っているシャンプーとリンス、洗顔石鹸にローション、てぬぐいと小銭入れなど必要最低限の銭湯グッズを湯かごに入れて、銭湯まで持っていっています。手入れが大変なので、私が持っていくのは脱衣所までですが……。

近所の銭湯だけでなく、ちょっと足を伸ばして遠くの銭湯まで出かけるときは、湯かごを持ったまま電車に乗ることも。風情があるので、手に取るだけで心が浮き立ちます。

技術や文化を未来に継いでゆく一端を担えたら

思い返せば群言堂に入社した理由は、「古き良きものを生かす」という所長・松場登美の想いに共感したからでした。

銭湯自体、どんどん数が減っています。その理由のひとつは、昔のように銭湯に通う人が少なくなってしまったから。また竹製の湯かごも、使い手が減っていると聞きます。

私が湯かごを持って銭湯に通うことで、何かが大きく変わることはないのかもしれません。けれど、大切な文化と技術を、未来につなぐ一端を少しでも担えたら。

趣味の時間をより鮮やかに彩ってくれるこの湯かごは、私にとって色々な意味で大切な一品。これからも使い続ける、「めづる道具」です。

■この道具について

・松野屋 湯かご(小)
・サイズ:約Φ170 × 290mm
・参考サイト:http://matsunoya.jp/

■この道具の持ち主

須釜奈津美(すがま なつみ)

たまたまりげんどうを訪れたことで群言堂を知り、その考えにとても感動。その後「日本仕事百貨」に求人が出ているのを見て応募。2014年入社。
好きなことは旅をすること。旅先でお祭りや伝統芸能に触れるのも楽しみ。ひまができれば古い町並み、懐かしい風景を探して日本全国を旅している。

書いた人

伊佐 知美
1986年、新潟県出身。「登美」ブランドで起用されている「マンガン絣」の産地・見附市が実家。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集長・フォトグラファーとして、日本全国、世界中を旅しながら取材・執筆活動をしている。著書に『移住女子』(新潮社)。

撮影した人

タクロコマ(小松崎拓郎)
1991年生まれ、茨城県龍ヶ崎市出身の編集者/カメラマン。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』編集部所属。

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