石見銀山 群言堂

群言堂の紙袋

群言堂の紙袋は一枚一枚手で裂いた紙を
袋に貼り付けていただいています。
当然のことながら二つとして同じものはなく、
出来上がった紙袋は機械では作れない味が一つ一つあって、
個性あるものとなり芸術的にさえ見えます。

2010年にはじまってから、多くのお客様に愛されて、
年間10万枚を作って頂いているこの紙袋。
今回は作ってくださっている社会福祉法人わかば会の障がい者支援施設 
邑智園さんに取材に行ってきました。
対応して下さったのは主任の尾原さん。

なんだかんだいいながらみんなが仕事に来てくれる、それが一番ですかねえ…。

何の仕事もそうですが、最初は職員も利用者さんも、
「ほんとにできるのか?」とか、
「新しいことはやりたくない!」とか、
尻込みしていた頃もありました。

でも職員も物作りが好きな人間が多いですし、
利用者さんも職人気質な方が多いです。

だんだんと道具を工夫したり、
気がつくと、この人がちぎらないとできないとか、
この人が貼らないとできないとか、
この人が検品しないとできないとか、

利用者の方々にはいろんな障がいの方がいらっしゃるので、
その人の得意な部分が決まっていったんです。
今ではできる部分をみんなで役割分担してやっています。
そうすると今度は、
「明日は私、病院だけど干さなきゃいけないでしょ?」とか
「今日はあの人いないけどどうするの?」とか心配されるんです。

重しを置いて、一枚一枚切っているところ。

切りためておいた紙を、一枚一枚紙袋に貼っていきます。

のりを乾かすために竿に干されている紙袋たち

最後に群言堂のロゴのスタンプを押して出来上がりです。

尾原さんの話の中にこんなフレーズがありました。

うちのできる範囲の仕事をさせて頂く事で、誰もが喜ばれる。
お客さんもよろこんで、うちも楽しんで仕事させてもらえる。

紙の裂き方も、のりの種類も付け方も、乾燥の仕方も
利用者さんそれぞれにあった方法を見つけていく工程は、大変だったと思います。
それでもこう言って下さる尾原さんをはじめ邑智園の皆様に、感謝しながら
裂く紙に使われている柄、「水の華」の由来を思い出しました。

水の華とは水中の植物プランクトンにつけられた愛称です。
この小さな微生物が光合成エネルギーによって地球上の酸素の二分の一を作っており、
また、地表の二酸化炭素を減らす役割も担っていると言われています。
その種類は五千種にも及び、海の食物連鎖の基となっています。

陸上では絶滅危惧種と呼ばれる動物や植物が増えているようですが、
絶滅危惧は自然界のみならず、あらゆる業種業態にも言える現代です。
多種多様な生物が共存する生物多様性と多種多様な業種業態が残る社会への
メッセージも水の華のデザインには込められています。

それぞれの差異を認めながら、それぞれの特性を生かして生きていく。
群言堂の理想とする生き方の一つの形が、この紙袋には込められています。

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