そこにある素材で

おいしいものを食べるのは嬉しいことですし、楽しくもあります。でも、家庭の日々の食事ではあまり欲張りすぎずに、土地のものや季節のものをおいしく、感謝していただくことがいちばんだと考えています。私たちは里山に暮らしていますし、海も遠くはないので食材は豊富ですが、特に地元にこだわっているわけではありません。時にはよそから送っていただいたり、持ってきていただくものも、同じようにおいしく楽しめれば、それで良いと思っています。食材もひとつの縁だと思っていて、その時、そこにある素材で、ちょっと工夫して好きなように、というのが私たちの姿勢です。

私たちが皆さんにお届けしている食事も、その時にある美味しい食材を活かそうと工夫しているものがいろいろあります。例えば本店のカフェでは、季節ごとに新作のパフェをつくって、いらっしゃったお客さまに楽しんでいただいています(季節を感じるのも食の大きな楽しみですし)。また本店や東京・西荻窪の「群言堂 暮らしの研究室」でメニューとしてお出ししていて、通販「食の定期便」でもお求めいただけるようになった「いのししスパイスカレー」も、私たちの住む大森町のおとなりの美郷町で捕獲された猪の肉でつくられています。

美郷町では、20年以上にわたって町をあげて獣害対策に取り組む中で、捕獲した猪の皮や肉を地域資源として生かす活動が生まれていました。そして野生動物の命に敬意を払い、生息環境を守りつつ境界線を設けて共存をめざしています。外傷を最小限に抑えるわな猟によって猪を生きたまま捕獲し、丁寧な血抜きを行うことで、おいしく衛生的な猪肉に加工し、授かりものとしていただいています。

食べる行為は日常のことで、生き方と深く関わってきます。私たちの場合は、食べ物に対する感謝の気持ちを大切にして、でもあんまりこだわりすぎず、その時のものをおいしくいただきながら日々を暮らしていきたいと思っています。