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またたび | 里山パレット図鑑

またたび


マタタビ科マタタビ属 落葉蔓性大木

日当たりが良いか半日陰の場所で、湿り気のある土を好み、枝がつるになってほかの樹木を覆うように伸びていきます。その実はお酒に漬けて薬用酒に、長く伸びた枝の芯は、カゴを編む材料にも使われます。花が咲く頃に一部の葉が白くなるのが特徴で、枝、葉、実を染料にしています。

花言葉

夢見る心地

里山パレットでの染色部位

枝葉実

うすきいろ


基本情報

北海道から九州にかけての山地に自生し、6月から7月に2cmほどの白い花を咲かせる。梅の花に似ていることから夏梅ともいう。つるは、若いうちは茶褐色で、成長と共に黒っぽい紫がかった茶色になるが、切ってみると白い随が詰まっている。実は長楕円形で先がとがり、晩秋に黄色に熟し、やがて落下する。実が虫に寄生されると、虫こぶの実(虫癭果)となり、ゴツゴツしたものとなる。1本の木のほとんどが虫こぶの実になる場合もあり、強風や強雨などで熟す前に落ちやすくなる。

補足情報

虫が寄生して虫こぶになった実は、漢方の生薬で、鎮痛、保温(冷え性)、強壮、神経痛などに効果があるとされる。「またたび」の名前の由来は、長旅に疲れた旅人がマタタビの果実を食べたら元気が出て「また旅」をしたからという説や、アイヌ語の「マタタムブ=冬の固い甲(虫が寄生した実は虫こぶといわれゴツゴツしている)」が転じたという説がある。「猫にまたたび」と言われるように「またたび」の香りが好物で強く反応する猫も多いが個体差がある。


大森ばなし

森の輪郭を覆うつる性の植物のひとつである「またたび」。葛や山葡萄やアケビのように日当たりの良い森の輪郭に多い。このつる性の植物たちの森の中での役割は、葛の項目で熱く語ってしまっているので、そちらも良ければ読んでみて欲しい。このマント群落を作る植物には、個人的に大いにリスペクトがあり「またたび柄」の図案もかつて描いたことがある。 

「またたび」の葉はある時期がくると半分だけが白くなり、花の少ない夏の森に、ちらちらとアピールしてくるこの白い葉が「花」のようにも見えて美しい。秋にかけて実がなり、これを果実酒の素材としても使われる。虫が寄生したゴツゴツの実の方が漢方医学的には、薬効が強くて貴重らしいのだが、そこまでストイックに果実酒を作り分けたことがないので、どなたか試してみて感想を教えてほしい。

植物採集人・鈴木

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