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第十一話 ヴォーリズ建築と写真|オザキマサキさんの根のある暮らし

ウィリアム・メレル・ヴォーリズ。この名前を、どこかで聞いたことがある方もいるかもしれません。

ヴォーリズさんは今から116年前、アメリカから滋賀県近江八幡市に来日した英語教師でした。

クリスチャンの彼は、キリストの教えを生活の中に生かそうとの想いで、建築の設計を始めます。

その後戦争を経ても日本にとどまり、日本に帰化し、83歳で亡くなるまで、建築、医療や製薬、教育などの多くの社会事業を展開されました。

ヴォーリズさん(写真集「日本人を超えた二ホン人
より」)

その中でも建築が有名で、約1600棟もの住宅や学校、図書館、病院、教会、講堂、銀行、デパートなどを全国で建てています。

ここ滋賀県はヴォーリズさんのお膝元ということもあり、近江八幡市を中心に数多くのヴォーリズ建築が残っています。

そしてここ高島市にも残っていて、ご紹介する旧今津郵便局もそのうちのひとつです。

旧今津郵便局の外観

旧今津郵便局は1936年(昭和11年)に建てられ、1978年までの42年間、地域の郵便局として、人々の生活になくてはならない存在でした。

しかしその役割りを終えてからは、ずっと貸倉庫となっていました。

老朽化も激しくなっていた旧今津郵便局ですが、そこに京都から移住してきたばかりの建築家、大石義一さん(現ヴォーリズ今津郵便局の会会長)が目をとめたのです。

そして郵便局として多くの人が利用したこの建物を、保存し活かしたいと思う地元有志の人々と一緒に『旧今津郵便局を守る会』が立ち上がり、
2013年に保存活用に向けた活動がスタートしたのです。

そして現在では、建物の補修をすすめながら、ジャズコンサートや落語会など様々なイベントを通じて、地元住民の交流の場となっています。

旧今津郵便局の内観 1

僕自身は、もともとヴォーリズさんのことを知りませんでした。

ある時にたまたま、近江八幡の旧近江八幡郵便局を訪れた際、「あぁなんだか温かみのある空間だなぁ」と、
すごく好きになったことがきっかけで、ヴォーリズさんの存在を知りました。

そしてフィルムでのモノクロ写真をしている僕は、あの温かい空間で、写真を撮れたらいいなあと思うようになりました。

旧今津郵便局の内観 2

その後ありがたいことに、旧近江八幡郵便局を保存されている一粒の会さま、ヴォーリズ記念館さま、
ヴォーリズ今津郵便局の会さまにご縁とご協力をいただき、『オザキマサキ写真館@ヴォーリズ建築』と題した一日写真館を、
年に1~2回ほど開催させてもらうようになりました。

そして回を重ね、来年から旧今津郵便局の2階をお借りして、常設の写真館を開設させていただくことになっています。

オザキマサキ写真館@ヴォーリズ建築での写真(高
島市で代々和蠟燭店を営む大西さんご一家)

まるですい寄せられるように、ご縁をいただいたヴォーリズ建築ですが、すごく面白いなぁと感じていることがあります。

それは、なぜ全国あちこちのヴォーリズ建築が、それぞれ自発的に保存活動されているのか?
誰かに頼まれた訳でもなく、ボランティアなのにです。

もちろんヴォーリズ建築だけに限らず、日本の古民家保存活動も同じです。
建築的に貴重だからという理由も当然あると思います。

ですが僕はそれだけではないように思うのです。
そしてそれは、写真にも同じようなニュアンスがあるように、感じています。


それは「うまく言えないけど、なぜか残したいと思うんだよね……」というような何か。

「別に撮っても撮らなくてもいいんだけど、でもやっぱり残しておきたいな……」というような感覚。

目には見えないけど、その空間からヴォーリズさんの想いを感じたり、家族を想う気持ちだったり。

これは大切なんじゃないかな……と心のどこかで感じたとき、人は利害をこえて、自ら動くのかなぁと思うのです。


建物の風格は人間の人格と同じく、その外観よりむしろ内容にある


ということばを残したヴォーリズさん。

今も生きるヴォーリズさんの優しい想いを、ぜひいつかヴォーリズ建築を訪れて、体感してもらえたら嬉しいです。



筆者プロフィール

オザキ マサキ

1974年広島県呉市生まれ。滋賀県高島市在住。写真家。「子どもが子どもらしくいれる社会」をテーマに、ドキュメンタリーやポートレートの分野で活動中。写真集に「佐藤初女 森のイスキア ただただ いまを 生きつづける ということ」がある。HP:www.ozakimasaki.com

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