⒈里山の暮らしに寄り添う植物の色をまとう。|里山パレット

私たちが暮らす大森町近辺の里山。ここに生育する植物たちは、遥か昔から、人々の食卓をにぎわす食材や、住まいを飾る花、あるいは生活道具をつくる材料を与えてくれる源として、暮らしに寄り添ってきました。そんな植物の恵みのうち、忘れてならないのが「色」のこと。まだ化学染料のなかった昔、衣を染める色は、土や鉱物、植物から「授かる」ものであり、あらゆる染めには薬効が宿ると信じられてもいました。そんな衣の原点を見つめつつ、新しい価値を生み出していく「復古創新」の取り組みのひとつが、2014年に始まった「里山パレット」。大森町近辺の里山に生育する植物を集め、その色で染めた衣を物語とともにお客様にお届けしようという試みです。

創業時から松場大吉・登美が抱いていた「里山の資源を使ったものづくりがしたい」という思い。それを前に動かしたのは、テキスタイルと植物をこよなく愛する青年・鈴木良拓の登場でした。学生時代には自分で布を織り、服に縫い上げ、草木染をほどこすという手仕事に熱中した彼。でも彼が群言堂で取り組みたかったのは、そういう手工芸としての染めではなく、幅広い人の暮らしに寄り添う、日常着の植物染めでした。染色会社の協力を得て、彼がたどり着いたのは、「ボタニカルダイ」という手法。木や花、果実に潜む何百という色素を布に移しとることで、ひと言では表現できない複雑な色を表現できるのが草木染めの魅力ですが、植物色素は光や洗濯に弱く退色しやすいのも事実。「ボタニカルダイ」は、この弱点克服のために、植物由来の染料に少しの化学染料を加えて、染色堅牢度(日光・洗濯・汗・摩擦などによる変色・退色が起きにくいこと)を叶えるものです。

植物の枝や葉、根、実に潜む色素は、季節の移ろいとともに刻々と変化します。さらにそれらの部位から染液を抽出する際の加熱温度や時間、ph調整も、染め上がりの色調を左右する要素。自然の植物と人の手わざが出会う時、植物は隠し持っていた思いがけない色を私たちの前にあらわにしてくれます。その驚きや感動は、何度味わっても飽きることがありません。願わくは、植物から授かったこの色たちが、遠く離れたあなたのもとに、里山の空気を運んでくれますように。そしてあなたの暮らしに寄り添う、かけがえのない色になってくれたらと思うのです。

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