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2021年夏|登美さんからの手紙

土を耕し、種を蒔くように。
受け継がれていく「心想事成」。


「心想事成(しんそうじせい)」。
かつて夫から贈られた中国の古い掛け軸に記されている言葉。心に想い続けていれば、いずれ天からスイッチが押されるように事が成る。それは今や私の人生訓になっています。天からのスイッチは「人との出会い」という形でもたらされることもあります。
鈴木良拓くんという青年との出会いも、まさにそう。故郷・福島で野山に親しんで育った彼は、群言堂に入って間もなく、広島から仔ヤギを貰い受けて飼い始め、周囲を驚かせました。その後は、わが社の「植物担当」として、この地に息づく植物を生かした染色技法で、新しい商品群を生み出したりもしました。
「この里山の風景にヤギの姿があったらいいな」、「里山の資源を生かしたものづくりができないかな」。
長らく私の心にあった思いが、彼の登場で少しずつ形になり始めたのです。

そして彼は今、町内の休耕田を再生した「小さな森のような畑」と名付けた畑で、野菜づくりに励む日々を送っています。
彼の農法は、農薬や化学肥料を使わないだけでなく、レタスも人参もキャベツも混ぜこぜにした種を、花咲かじいさんのようにばら撒いて混生させるという大胆なもの。土中の微生物の活発なはたらきや、多様な生命が共存してせめぎ合う関係が、土壌も野菜も強くするのだとか。廃材をつかって自作した移動式鶏舎を引いて畑を回る鈴木くんの姿を見ていると、かつて何かで読んで感銘を受けた「遊びを深めると仕事になる。仕事を極めれば遊びになる。」という言葉が思い出されて、勇気づけられます。
数年前、私たち夫婦がここで会社を始めたのは、荒れ地に鍬を入れて耕すような行為でした。そうやって耕した土にさまざまな種が舞い降り、芽を出していく。それを見守ることが私の役目、そして終わらない夢なのだと思う今日この頃です。


松場登美

2021年春|登美さんからの手紙

あるがまま、前を向いて。おしゃれと人生は続きます。

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