〜 ひとつの繭にふたつの蚕 〜
ふつう一匹の蚕(かいこ)は、ひとつの繭を作ります。
しかし稀に、二匹の蚕がひとつの繭を作ることがあるのです。
その繭は『玉繭(たままゆ)』と呼ばれ、
紡ぐと独特なふしを持つ美しい糸になります。
二匹の蚕から生まれた繭は、糸が絡んでもつれ合った状態なので、
糸に引き出す製糸の工程が容易ではないそうです。
極細な生糸(きいと)の中に、大きな節や小さな節が飛び込んできます。
またその節は不規則で、自然の味わいがあります。
一本の糸の中に、様々な表情を持った
美しく、素朴な糸となるのです。