石見銀山 群言堂

第6週目_茅葺きの始まり(葦:ヨシと藁:わら束、フルを葺く)|鄙舎茅の葺き替えプロジェクト

いよいよ茅葺きが始まりました!

「エツリ」竹が茅が落ちるのを防ぎます。

角(すみ)は熟練職人の担当とのこと。

遠くからも茅の葺き替え中とわかります。

ついに一段目の茅葺きが完了しました!

細かなクズが落ちたりしないように、一番下は葦(ヨシ)で葺くそうです。

両手で塩梅よく扱える分量の束です。

2017年4月18日(火)

春の嵐のようなお天気だった昨日から、徐々に晴れ日となっていった本日。いよいよ茅の葺き替えが始まりました!軒下となる葦(ヨシ)を葺いていきます。思っていたよりも丈がある茅(葦)は、すでに雨除けシートまで届く高さです。きれいに並べられていく作業に見入ります。淡い小麦色の葦が並んでいく様子はとても美しく、すべての面が覆われるのが心待ちでした。同じ分量を束ねては真っ直ぐに置き、ゆるく紐で縛り小口の水平をとり、固定する。その作業が繰り返されました。午後3時頃、妻側がとうとう完了し、平側も高さの違う部分を調整する部分を最後の作業に、無事に完了しました!明日は、俵にまとめられた藁(わら)を積んでいきます。

丁寧に軒の水平をとりながら固定していきます。

この「コテ」で小口をコンコンと叩いて水平をとります。

亜麻仁の滑りにくい紐で縛ります。

屋根裏から出てきた書簡。謎解きが始まるかもしれません。

真っ直ぐな茅を斜めにしながら調整します。

明るい陽射しが差し込む鄙舎屋内も間もなくおしまいです。


角と真ん中からスタートします。

鉄針の穴に紐を通して締めます。

丸くカットされ整えられた角。

厚みを出す藁(わら)束を葺いていきます。

本社屋根からの鄙舎の現在です。

この度の茅の葺き替えの大将森原さんが新人の田中さんに技を伝えながら作業が進みます。

再び水平をとるためにテグスをピンと張って出すぎたり引っ込んでいる葦を調整します。

2017年4月19日(水)

昨夜の強い風が残る日中となりました。東側と北側を昨日と同じように葺いていきます。午前中いっぱいでスムーズに完了し、昨日から準備されていた藁(わら)束をぐるりと葺いていく作業が始まりました。
藁は一本一本は風にそよぐほどの細さですが、束にすると軽くて分量のあるものになります。適当な分量にまとめて、小口に近い部分と先の方の2か所を紐で結わえます。作業を見ていると、紐を結ぶ場所によって、今後の屋根の傾斜に影響が出るらしく、場所場所で束ねる紐の位置を調整しています。熟練の職人さんが、作業をしている新人の職人さん達に理由を伝えながら位置を調整します。葦(ヨシ)を葺いていくときも、持っている経験をその場その場で伝えていきます。
現場では屋根の形を見ながら、全体のイメージを浮かべながら話しながら形を決めていきますが、細かな打ち合わせはありません。目分量と感覚で長さや束の分量を計りながらきっちりと美しく一つの工程が完了していきます。ほとんどが人の手で行われており、自然の材料を使って人の手で作れるものはたくさんあると感じさせられます。

角からのスタートです。

軒の傾斜を調整しながら一つ一つ置いていきます。

ほとんどの作業が人の手によるものです。

大田市の山から切り出した真っ直ぐな竹です。


ぐるりときれいに押さえ竹で固定された藁(わら)。

フル(古い茅の再利用)を先ず角に置きます。

藁とフルの層が見えます。

東側の平側の様子です。

軒の出具合を調整したたためにできた段差の角の形に合わせて置いていきます。

起点となる茅が角に置かれました。

2017年4月20日(木)

軒の厚みと屋根の傾斜を作るための藁束置きがすっかり完了しました。最初の茅葺きから屋根の形造りは始まっていますが、藁束を置いたことでまた形が見えてきました。四隅の形をしっかりと入念に決めていきます。
ところで、今まで聞いていた話から“藁”という素材は安価でコスト合わせのために使われるものだと、なんとなく思っていました。耐用年数も藁は10年ぐらいで葦(ヨシ)は20年〜30年と調べると出てきたこともあります。職人さんにあらためて尋ねると、そうじゃないんですよ、と話をしてくれました。藁は、穂先が根元よりも細くなっているため、軒の受けの傾斜を作るのに有用で、葦が固く真っ直ぐした特性なのに対して、柔らかくしなる特性で隙間なく屋根の密度を埋めてくれ、雨漏りしにくいそうです。扱いやすいため、稲藁が採れる地方ではメインの材料として葺くとのことでした。
現在藁を使っている部分も、葦で葺くことはもちろんできるそうですが、そういった長所があるため、藁を使っていると話してくれました。軒に見える層も、葦と藁とで濃淡があり、きれいに見えます。きちんとお話が聞け、お伝えすることができ、よかったと思いました。

藁束の上に置かれたフル茅。常に屋根の形を意識して置いていきます。

きれいにカットしていきます。


茅を固定できる便利な道具。

フル茅で一面葺かれた鄙舎です。

今回の葺き替えでこの北西の角はちょっとした趣向を凝らします。

軒下に潜って垂木を下から見たところです。

こちらから見る鄙舎も緑で生き生きし始めました。

平側が持ち場の的川さん。熱心に先輩に指導を仰ぎます。

角に茅束が置かれると、新しい層の始まりだとわかるようになりました。

2017年4月21日(金)

お天気に恵まれ、今週は毎日のように工程が移り変わっていきます。フル(古い茅の再利用)の上に「水切り(雨水を切る軒の一番先)」となる茅を葺き、軒づくりが完了します。
厚みは相当に分厚くなり、話に聞いていた通り重みもかなりありそうです。水切りから上の屋根の部分のことを「平」というそうです。これから平をつくっていくのですが、工程を見ていると、いつも北西の角が一番早い動きをします。この角はもともと屋根の重みに耐え切れず、茅がずり落ちていた部分で、今回の葺き替えでそういったことが起きないよう、屋根の形について当初から談義されていました。
いよいよ「平」を葺く段階になって、具体的なイメージを話し合います。話し合いの結果、山陰では見かけたことのない造り「つばめぐち」をやろう!と決まりました。話を聞きながらも、頭に思い描いているイメージが正しいのかどうかわからない、と伝えると、日曜日の午後にはできていますよ、との頼もしい言葉。楽しみに日曜日を待つことにしました。

軒下に深く潜らないと作業が進みません。

一番厚みが出る北西の角の仕上げについて話し合う森原さん(左)と松木さん(右)。

仕上がりの屋根のイメージを構想している松木さん。

そば畑などに保管されている茅を根気強く田中さんが足場まで運びます。

軒→水切り→平と葺いていきます。ボリュームがある北西の角。

軒の3層がはっきりとわかります。

茅の家・鄙舎を葺きかえるの他の記事